『釣りと自分』遠い記憶・・・9 たしか、一昨年の夏だっただろうか。いや、はっきり覚えている。 解禁から濁りが取れなくて、ずっと行けなかった新潟に行く前の晩。 暇なようだったら、早く閉めてしまおうと思っていたが、 やはり「焼きうどん」が現れた。 空いている店内に2人の男性が入ってきた。初めてのお客さんだ。 カウンターに座り、スコッチをくれないかと言った。 最近では、とりあえずビールという注文ばかりなので、びっくりした。
僕の店は、開店当初ドイツの黒ビールしか置かなかった。 生ビールなんて・・・と思っていたからだ。 しかし、生ビールが無いだけで随分と多くのお客さんが帰ってしまった。 そして、もう1度来てくれることは無かった・・・。
どうして?と思ったが、こちらが勝手にこういう雰囲気のお店。 などという拘りが通用する立地では無かったのかも知れない。
不動産屋をやっていた同級生に店探しを全て任せてしまい、 自分は内装やメニューの事ばかり考えていた。
甘かったのだな・・・。と気づくのにそんなに時間は掛からなかった。 生ビールが無くても来てくれるお客さんだけでは赤字になっていたからだ。
それから僕は、生と書かれた日本の瓶ビールを置いて、それでも駄目で、 サーバーという物と、ビールジョッキを置いたのだった。
そのビールジョッキで、生ビールを渓太が飲んでいる。 彼にスコッチを勧めたら、『ひっくり返っちゃうよ』と言われてしまった。 こういう飲めない人もいるんだな・・・ と僕は自分のグラスでスコッチを舐めた。 偶然にもあの時のお客さんと同じ銘柄だった。 ジャンル別一覧
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